Resources
コラム
コラム
2023年版 実録!越境ECで売れた人気商品と検索ワード
2023.07.24
国内市場の飽和、円安、日本経済の停滞……。さまざまな理由から、越境ECで海外への進出を目指す企業が増えています。
日本より市場規模も成長スピードも桁違いの海外市場には、ビジネスチャンスが多いことは事実。同時に、市場があまりにも広すぎて何を売ればよいのか迷う人も多いのではないでしょうか。
本記事では、越境ECの主要市場であるアメリカ、中国、東南アジアの最新トレンドを紹介します。さらに、急成長中の東南アジアでは商品カテゴリーごとの検索キーワードも独自データとともに公開。
海外の越境ECユーザーは現在どんな商品を探しているのか、最新のトレンド情報とともに分析していきます。
2023年に入り、コロナ感染症対策の緩和から外出ムードも高まったアメリカ。その影響で、越境ECにおける人気商品のトレンドにも変化が現れました。
アメリカ向け越境ECにおける、特筆すべき最近の傾向は下記です。
以前は勢いがあることで知られていた中国市場ですが、コロナ禍の政策などの影響で経済は停滞中。北米市場よりも経済回復は遅いのではないかとも言われています。そんな最近の中国では、消費のニッチ化が報告されています。
中国の越境EC市場のトップシェアを占めるアリババグループのTmall(天猫、Tモール)が2023年4月に発表した最新トレンドは下記です。
1996年から2010年に生まれたZ世代の消費者は、中国の人口で占めるのは約15%ほど。しかし支出額では、ニッチ市場における平均年間支出はTmall全体の平均よりも20%も高いという結果となりました。
経済や人気商品のトレンドも乱高下が目立つ中国市場。ニーズの細分化が進む中国へ向けた進出を考える場合、今後はマス市場を狙うのか、Z世代が集中するニッチ市場を狙うのか選択に迫られそうです。
越境ECの進出先として、新たな候補として話題に上がることも多くなった東南アジア市場。
かつての「物価が安く、購買力も低い」というイメージから一転、近年の経済成長により、東南アジア各国の越境EC市場はかつてないスピードで急拡大しています。
日本の2倍近くのGDP(国民総生産)を誇るシンガポール、日本の高度経済成長期並みの急成長を記録しているタイ、フィリピン、マレーシアなどの国々。加えて、日本語が通じやすく日本文化との馴染みの深い台湾も越境ECの進出先として注目されています。
東南アジアでトップシェアを維持する越境ECプラットフォームShopeeから、最新の売れ筋商品や検索キーワードについて独自データを公開。これらのデータを元に、各国の最新トレンドを分析していきます。
*本記事掲載の商品は、2023年4月1日〜5月24日にShopeeが独自に行った調査に基づきピックアップしています。(一部、集計期間が異なるものには注釈をつけています)
シンガポールの1人あたりのGDPは、日本の2倍近いということをご存知でしょうか?
2021年における一人当たりのGDPは、シンガポールは72,794USドルで日本の39,285USドル、つまり約1.8倍でした。それだけ高収入の消費者も多く、購買力も高いことを示しています。
高所得者が多く、日本人駐在員も多く住んでいるシンガポールは越境EC初心者にもおすすめです。クレジットカード所有率・インフラの普及率ともに高く、自国に産業が少ないため国民の多くが日頃から越境ECの利用に慣れ親しんでいます。
なお、現在は東南アジア各国に進出しているShopeeもシンガポールで設立されました。
ヘルス・ビューティーの人気商品
外見を整えるメイクアップよりも、肌やカラダを整える商品の人気が目立ちます。
外資系企業の参入が目立つシンガポールでは、メイクアップブランドはすでに市場に多いと見受けられます。こうしたシンガポール市場における日本製品の強みは、「肌へのやさしさ」「安全性」「良質な原料」などといった外資系商品とは異なるアプローチなのかもしれません。
人気商品 5選
食品・飲料の人気商品
お茶、コーヒー、菓子など幅広いジャンルの商品が人気です。逆に言うと、消費者の好みが細分化していると言えるでしょう。
贈答品向きの菓子や子ども向けのミルクなどの人気商品も目立ちます。良質なもの・安全なものを日本製品に求めていることが読み取れます。上位検索キーワードでは、コーヒー、ミルク、緑茶、水などは定番となっていますが、最新データではMilo(ミロ)が1位にランクインしました。
人気商品 5選
ゲーム・ホビー・電化製品の人気商品
個別の人気商品では、ポケモン、タカラトミー、ONE PIECEなどのアニメ・ゲームグッズやフィルムカメラ関連商品が目立ちます。
シンガポールに限らず、世界各国で人気の日本のアニメ・ゲームグッズ。アニメ・ゲーム好きな大人からの人気に加え、子どもにこうした商品を買い与える人も多いのかもしれません。
検索キーワードでは、パソコン関連商品が人気です。
人気商品 5選
経済は急成長中、しかし進出先としての認知度がまだ低いマレーシアは越境ECの穴場市場ともいえます。インフラも良好なので、多くの多国籍企業が投資や進出を進めており、国民の購買力も高まってきています。
経済成長中のマレーシアでは、女性の労働参加率は他のASEAN諸国と比べてまだ低くとどまっています。(男性 82.6%、女性 56.1%:2023年 JETRO報告より)
つまり、購買力にはまだ男女格差があり、男性向け商品の市場規模が大きいと考えられます。
とはいえ、マレーシアはマレー系、中華系、インド系などの多様な民族がいるため、国内の消費者ニーズも多様です。またマレーシア国民の平均年齢は28.5歳と非常に若いため、今後この市場がどのように展開していくか注目です。
ヘルス・ビューティーの人気商品
基礎化粧品に加え、サプリメントの人気が目立つマレーシア。日本製品の安全性への期待や、信頼が高いことが読み取れます。
人気商品 5選
食品・飲料の人気商品
個別の人気商品では、ギフト向けの菓子の他、コーヒーや和風だしなどが人気です。白い恋人は、人気商品の定番として長い間ランクインしています。
検索キーワードでは、チョコレートなどの嗜好品の他にラーメンがランクインしています。
人気商品 5選
*こちらの上位検索キーワードは2023年1月28日〜2月28日のデータに基づきます。
ゲーム・ホビー・電化製品の人気商品
検索キーワードはiPhone関連商品が目立ち、近年の携帯普及率の急上昇を反映しているようです。
個別の人気商品では、カメラやガンダムやファイナルファンタジーのフィギュアの他ポケモンが人気。「かわいい」イメージの商品よりも、男性的なイメージの商品が多いことが印象的です。
人気商品 5選
海苔などの日本独自の食品が、多く検索されているタイ。実際にバンコクでは手頃な価格帯の日本料理店や居酒屋なども数多くあるため、都市部では日本の味が広く馴染んでいるのかもしれません。
売れ筋商品を見ると美容にも関心が高いことが読み取れますが、人気商品は外見を整えるアイテムに集中しています。
ヘルス・ビューティーの人気商品
リップ、マスカラ、アイライナーなどメイクアップ商品が多く検索されているタイ。他の東南アジアの国々と比べて、女性の外見を整えるアイテムのニーズが高いことが読み取れます。
個別の人気商品では、サプリメントが多くランクインしていることが特徴です。特にオルビスのディフェンセラは人気継続中のトップセラー商品です。
人気商品 5選
食品・飲料の人気商品
菓子などの嗜好品に関するキーワードが多く検索されています。個別の人気商品では、ティーバッグが上位にランクイン。
注目すべきは、「海苔」や「日本のデザート」といった日本独自の食品もタイでは多く検索されているという点。これまでに羊羹が人気商品としてランクインしたこともあり、タイは日本独自の味覚も通じやすい国だといえるでしょう。
人気商品 5選
*こちらの上位検索キーワードは2023年1月28日〜2月28日のデータに基づきます。
ゲーム・ホビー・電化製品の人気商品
検索キーワードでは、iPhone関連の商品が人気です。近年、携帯電話の普及率が急激にアップしたことも関係しているのかもしれません。
個別の人気商品では、ガンダム、サンリオなどキャラクターに関連した商品が目立ちます。
人気商品 5選
日本へ旅行する人も多いフィリピン。帰国時にはお土産を買う習慣があるため、日本に来たことがない人でも貰ったお土産から日本商品を知るというケースもあります。
フィリピンから旅行で来た人が、日本でどんな買い物をしているかを分析すれば、越境ECにおける売れ筋商品を見極められるかもしれません。
ヘルス・ビューティーの人気商品
化粧品、スキンケアともに満遍なく人気ですが、日本のドラッグストアでよくみかける商品が人気です。インバウンド客がドラックストアでお土産を大量に購入するケースも珍しくなく、これらの人気商品はお土産品のリピート買いである可能性が高いと推測されます。
最新の人気商品では、定番のクレンジングに加え、夏に向けた日焼け止めも売れ筋となりました。
人気商品 5選
食品・飲料の人気商品
菓子の他にはカップラーメンが人気。その他には、チョコレートやキャンディーなどの甘いお菓子が人気。
*こちらのカテゴリー情報は2022年11月1日〜12月21日のデータに基づきます。
人気商品 5選
電化製品・ガジェットの人気商品
日頃から音楽を聴く習慣が強いフィリピンでは、売れ筋商品にも音楽好きの国民性がよく現れています。
人気商品ではイヤフォンの他に、キーボード、DJセット、マイクなど音楽に関する商品が数多くランクインしています。
人気商品 5選
歴史的に日本との繋がりが深く、日本語がわかる現地のユーザーも多い台湾。日本の商品にも以前から馴染みが深く、台湾国内では既にたくさんの日本商品が販売されています。
日本慣れした人が多い台湾向けの越境ECでは、現地で手に入りにくい商品やかわいいキャラクターものの商品などが人気です。
ヘルス・ビューティーの人気商品
フェイス、ボディ、ヘアケア、メイクアップと幅広いジャンルの商品が満遍なく人気です。逆にいうと、消費者の好みが細分化しているとも言えるでしょう。
生活必需品というより、高級感のある商品が人気のようです。
人気商品 5選
食品・飲料の人気商品
「白い恋人」「六花亭」や「ヨックモック」など、百貨店や空港・新幹線の土産物コーナーなどで手に入り、観光土産としても人気の菓子が多くランクインしました。
特筆すべきは、台湾にも店舗進出している「一蘭」のラーメンでしょう。台湾では、ブランド力のある食品が人気がある印象です。
*こちらのカテゴリー情報は2023年1月28日〜2月28日のデータに基づきます。
人気商品 5選
ゲーム・ホビーの人気商品
Otamatoneなどの、なんとも言えないかわいいキャラクター製品が人気。日本製品が得意とする「ゆるい」「かわいい」デザインが、台湾の消費者に人気があるようです。
その他には、カメラやヘッドフォンなどの電化製品も人気です。
人気商品 5選
以上、越境ECにおける最新トレンドと人気商品をご紹介しました。アメリカ、中国、東南アジア、それぞれの国や地域で消費者のニーズが大きく異なることがわかったのではないでしょうか?
また最新のトレンドとして、消費者のニーズが細分化に向かっている点も挙げられます。つまり、ニッチな市場のニーズも高まってきており、ターゲットを的確に定めれば大きなリターンも見込めるということです。
国内市場における販売で壁を感じがちな昨今、チャンスが大きな越境ECにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
Natsuko Sakurai
2拠点生活フリーランス。ロンドン、オランダ、スペイン 3ヵ国での在住や現地企業での勤務経験があり、帰国後も海外ビジネスに関わり続けています。コロナ禍をきっかけに、海外にしかオフィスのない現地企業との国際リモートワークが始まったりと、たえず働き方は進化中。