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成長率30%!世界で盛り上がりを見せる新ビジネス「越境EC」 とは何か
2022.01.04
「国内だけでは限界があるから海外に販路を拡大したい・・・」
「世界中の消費者に自社の商品を伝えたい・・・」
商品やサービスを販売するセラーさんなら、誰しもが一度は思い浮かべることですよね。
日本製品は依然としてその品質の高さにおいて、海外の消費者から根強い人気を誇っており、MADE IN JAPANが欲しい海外のユーザーも、そして海外に商品を販売したいベンダーもたくさんいます。
ですが、
「海外の法律や税制の事なんて詳しくないから中々手を出せない・・・」
「言葉が通じない相手とやり取りするのは正直不安・・・」
と思われる方もいるかと思います。
誰だって、初めての海外ビジネスには不安を伴いますよね。
そんな方に是非オススメしたいのが、「越境EC」を活用した海外販売です。
越境ECはその名の通り、「国境を越えた」「ECサイト(オンライン販売)」のことです。
越境ECは国内のベンダーと海外のユーザーを結ぶプラットフォームなのです。
今回は越境ECについてどこよりも分かりやすく一から解説していきます。この記事を読み終わる頃には、あなたも越境ECビジネスを理解し、そして今すぐ行動に移したくなることでしょう。それでは順番に見ていきましょう。
越境ECとは国境を越えて海外の消費者に通信販売を行うオンラインショップのことです。
その発端は2015年の流行語にもなった中国人インバウンド観光客による「爆買い」でした。
大量の観光客が百貨店や大型家電量販店、ドラッグストアに押し寄せ行列を作り、日本製品がジャンルを問わず飛ぶように売れ、日本製品が特に中国で売れることへの確信につながりました。
2019年頃になると中国当局の規制の強化により、爆買いは落ち着きを見せますが、インバウンド観光客帰国後のネットショップ及びサービスによるリピート買い、知人へのプレゼントや口コミの広まりによる日本製品の購入・成約率の方が爆買いでの収益を越えたのでした。
以後、越境ECは「爆買い終焉後の救世主」として各企業の注目が集まっています。
アジア市場、特に中国市場において日本製品の品質とブランド力は一目置かれており、越境ECビジネスにおいても日本製品は人気が高いです。中国人消費者が越境ECを利用する理由は「商品の品質が保証されている(正規品)だから」という回答が第1位として挙げられています。越境ECでの日本の売れ筋商品は化粧品、美容・健康関連商品を筆頭にベビー用品、ファッション、電子機器、文房具なども人気です。メキシコにおいてはアニメグッズ系やウィッグなど、日本のサブカル製品も売れ筋商品となっています。中国を始めとするアジア諸国は、日本と地理的距離が近いことも、日本の越境ECを有利にさせています。
海外のユーザーは「高品質」で「自国にはないユニークな」日本製品を常に求めているのです。
ユーザーとベンダーの双方にメリットがある越境ECのスゴさ
ユーザーにとっての越境ECのメリットはなんと言ってもインターネットの普及により、いつでも・どこでもお買い物ページにアクセスできることでしょう。加えて国内では手に入らないユニークな商品がネットで簡単に手に入ることも消費者にとっての魅力の一つです。
これは前項でも触れましたが、特に中国において市場に粗悪品や偽造品が出回る国にとっては、正規品が必ず手に入る日本の越境ECはとても魅力的な存在なのです。最近では中国において、日本の高付加価値商品(高品質な家庭用繊維製品)も売れているようです。
商売目的の輸出入貿易ですと高い関税がかかったり、規制が厳しかったりするのですが、越境ECなどの個人輸入では海外のショップから消費者に直接物が移動するので、中間の業者の利益が入らず、商品を安く購入できます。仮に送料や関税、消費税を払ったとしても、トータル的に見ると国内販売価格より安く購入できる場合が多いです。
日本国内の出生率の低下による人口減少、さらには国内消費量の鈍化により、国内市場が陰りを見せている今、商圏が絞られない越境ECは魅力的な市場です。越境EC最大のメリットは日本製品を欲しがっている海外のユーザーを取り込むことができる点です。
例えば海外に販売チャネルを開拓しようとして実店舗や海外法人を設立しようとすると、莫大なコストや手間、そして人件費がかかりますが、インターネットを利用した越境ECなら比較的ローリスクでコストも抑えつつ新規開拓ができます。
今まで必要だった貿易実務担当者も商社も乙仲業者も、越境ECプラットフォームを活用すれば全て必要なくなります。そう、あなたは越境ECの営業販売担当者を置くだけでよくなるのです。
自社で海外顧客向けにECサイトを立ち上げてオンライン販売するのも立派な越境ECですが、初心者で越境ECに対するノウハウがないという方は、海外の大手ECモールに出品すれば、大手の集客力と販促力を活用することができ、新規顧客獲得が容易になります。また、いきなり海外のECモールとやり取りするのが不安という方も、日本国内にある越境EC代行サービスなどを活用すればトラブルも少なく越境ECに参入することができます。
税金は商品を受け取る際に、消費者に支払い義務が発生します。商品を海外へ販売する場合は、国内販売にはなりませんので日本の販売に関する消費税は課せられず、国内の処理においては「輸出売上」となり、税率は0%として計上されます。これを「輸出免税」と言います。輸出免税が行われる理由は2つあります。1つは日本の消費税を輸出先の国の人に負担させないため、もう1つは輸出される商品の国際競争力を維持するためです。
海外で製品を販売する際には消費税は発生しませんが、国内での商品仕入れや商品発送に関しては既に消費税が発生しています。海外で販売する商品にかかるコストも消費税免除の対象です。既に支払ってしまった消費税は、確定申告時に所得税を余計に支払ってしまった時と同じように、申告によって還付されます。
海外で販売する商品にかかるコストとは、例えば事務用品などの消耗品費や交際費、広告宣伝費などです。
さらに、海外販売ECモール(Amazon、eBayなど)で販売の際にかかる消費税についても還付されます。つまり、ECモールに支払う出品手数料には消費税が加算され、ECモールより請求されますが、この加算された消費税についても還付を受けることができるのです。
越境EC市場はインターネットの拡大・スマートフォンの普及に伴い、中国やアメリカを筆頭に年々拡大傾向にあります。新型コロナウイルスによる巣ごもり消費や在宅勤務の影響で、今後益々通販利用率は高まり、若い世代を筆頭にオンライン中心の購入生活に移行していくと見られます。
(引用:https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003.html)
図からも分かる通り、日本のBtoC-EC市場規模は物販系分野を筆頭に右肩上がりです。
政府によるインバウンドと観光の再始動などにより、まさに今が越境ECに取り組む絶好の機会と言えます。
日本は越境ECの消費国としては海外の事業者に対する信頼性の低さや商品の品質、代金決済への不安を抱いていることから、越境ECの規模はあまり大きくありません。しかし、越境ECによって主要な販売先となるアメリカや中国などに対しては日本の販売額は右肩上がりで拡大が続いています。
(引用:https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002-1.pdf)
また、主なBtoC国別越境EC市場規模(消費国)のランキングですが、市場規模においてはアメリカがGDPの高さからトップに躍り出ています。
(引用:https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002-1.pdf)
また、主なBtoC国別越境EC(消費国)の利用者数を見てみると、中国がその人口の多さで第2位のアメリカを大きく引き離し、トップに躍り出ています。
(引用:https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002-1.pdf)
今後も中国やアメリカを中心として越境EC市場は拡大の方向に向かうと見られています。
かつて大量の中国人観光客が「爆買い」を行ったように、現在でも電化製品や化粧品の購入を目的に、日本を訪れる外国人は少なくありません。また、こうした人々は日本製品を実際に利用して、品質の高さを実感し、再度購入したいと考えます。こういったリピート需要も越境ECを利用する理由の一つなので、インバウンドはEC業界でも注目の市場と言えます。
2019年度の訪日外国人の国別内訳は以下の通りとなっており、中国を始めとするアジア諸国が全体の8割以上をしめています。
(引用:c60fec2cddecdc54e1ac7fc059425a91.png)
EC文化が既に成熟している中国市場は日本企業が出店できる現地大手ECモールも多く、また日本製品の人気も高いので、日系企業が手始めに参入しやすい国となっています。その他にも近隣諸国の韓国・台湾やこれからの伸び幅が期待されるASEAN諸国も日系企業にとって魅力的な進出先国であると言えます。
日本国内のサーバーを利用して越境ECの自社サイトを構える事業モデルです。元々日本語で提供している自社ECサイトを多言語化することで越境ECに対応させます。国内自社サイトを越境EC仕様にするためには、越境EC専用ショッピングカートであるShopify(ショピファイ)やMajento(マジェント)などのサービスを活用してオンラインショップを構築します。配送は国際配送サービス等による直送ですが、転送サービスを利用する場合もあります。
日本国内で越境ECに対応したモール等へ出店(出品)する事業モデルです。国内消費者を対象とした出店(出品)の延長線として海外の消費者に向けて販売します。配送は国際配送サービス等による直送ですが、転送サービスを活用することもあります。
転送サービスは例えば、日本国内ECモールのYahoo!ショッピングや楽天市場に出店したまま、日本国内の転送事業者に商品を買い取ってもらい、海外の購入者に発送代行してもらう方法です。ベンダーは日本の代行業者の指定倉庫に配送するだけで済みますが、代行販売での利益や高額な配送料を上乗せされるため、最終価格が日本の販売価格より高くなる傾向があります。また、いくらでユーザーに売れたのか、どの国のどんな人に売れたのか、購入後の感想や要望などの情報は、個人情報の譲渡や受け渡しとなるためベンダーは入手できないことが多く、自立が難しいモデルと言われています。日本国内のサービスではtenso株式会社の「転送コム」や株式会社ナビバードの「BuySmartJapan」などがあります。
相手国のECモールやECサイトに出店(出品)する事業モデルです。出店(出品)に際しては、ECモール、ECサイト運営事業との交渉が発生するため、専用の代行会社によるサポートを得るケースが多いです。越境ECの中で、海外のECモールへの出店が一番参入しやすいと言われています。現地ルールに沿った運営により売上拡大を目指しやすく、現地の消費者が慣れている決済方法や出荷システムを利用できるので、出店の難易度はさほど高くありません。
保税区に指定された域内の倉庫に予め商品を輸送しておき、オンラインショップやECモールで商品が購入された場合、保税倉庫から配送する事業モデルです。中国向け越境ECでよく活用されています。相手国からの発送であるため、直送と比較し、配送期間が短くて済みますし、送料も安価にできるメリットがあります。ベンダー側からしてみれば倉庫保管等に一定のコストがかかります。小規模な越境ECを利用したい場合は、保税区モデルではなく直送モデルを利用して、DHLなどのクーリエ便で自国内倉庫から海外顧客向けに一気に直送するのも一つの手です。
一般貿易同様に、国内の輸出者と相手国側の輸入者との間で貿易手続きを行い、相手国側のECモールやECサイトで商品を販売する事業モデルです。一般的なBtoB型貿易において販売チャネルとしてECを活用するスタイルとなります。
相手国側のサーバーを利用して自社サイトを構築する事業モデルです。既に相手国において自社商品が浸透し、かつECサイトの運営を自社でコントロールできる体制を整えていれば取り組みやすいモデルです。
自社ECサイトによる越境ECビジネスは、ECサイト外観を自由にデザイン・カスタマイズできる点や、企業独自の販促が可能などのメリットがある一方で、集客を全て自力で行わなければならないという難点があります。要は世界を相手に、日本もしくは進出国の一点でこじんまり個人商店を開店するようなものなので、ショッピングモールのような集客力に頼ることはできません。既に世界に名の通っているブランド力の高い企業なら可能な事業モデルではありますが、越境ECに詳しいプログラミングスキルや海外SEO・海外マーケティングの知識も必要になってきます。さらに運営をしていくと新しい決済システムやセキュリティシステムなど様々な機能を追加したり、サイトをアップデートしたりするなどのメンテナンスが必要になってくるので、越境EC事業にあまり多くのコストや人件費をかけられないという中小企業には難易度の高いビジネスモデルとなります。
ECモールとは、複数のショップが集まって、一つの大きなショップを形成しているECサイトのことです。インターネット上の百貨店やショッピングモールを想像してもらえれば分かりやすいかもしれません。自社でECサイトを構築するのも良いですが、ECサイトの運営ノウハウがなかったり、極力早くECで売上を上げたい場合はECモールに出店(出品)するのがおすすめです。
ECモールにはさらに2種類あって、マルチテナント型とマーケットプレイス型とに分けられます。
マルチストア型はECモールを商店街として捉え、各ECモールに「出店」する形式のことです。楽天市場やYahoo!ショッピングがその代表格となります。企業側の裁量が大きいので、店舗のデザインや独自のブランディングで企業色を出すことができますが、その分商品登録や受注管理、売上集計などの管理業務は企業側が行わなければならず、負担が増すというデメリットもあります。
マルチストア型が「出店」という形をとるのに対して、マーケットプレイス型は「出品」という形をとります。Amazonがその代表格です。出品者は商品を出品登録するだけでよく、商品データはECモール側が管理してくれます。手数料を支払えば在庫管理からピッキング、発送作業などもアウトソーシングすることが可能です。一方でユーザーから見れば出品企業の存在感は薄く、店舗ごとに特徴を出すことはできません。また、一つの商品ページでカートを争うので価格競争が激しくなります。
さて、これまで色々と越境ECの種類についてそのメリットやデメリットを挙げてきました。越境ECのビジネスモデルは何種類かありますので各企業に合った事業モデルを選択することが何より大事ですが、EC初参入で越境ECのことについてはほとんどよく分からない、という方には是非マーケットプレイス型越境ECをおすすめします。
越境ECの運営に関わる管理業務は全てマーケットプレイス運営母体が代行してくれますし、ECモールの運営ノウハウと集客力を最大限活用することができます。言語力に不安があったり、消費者とのトラブルに巻き込まれたとしても、ECモールが間に入って解決してくれる場合がほとんどです。短期間で成果も上げやすいので、初心者さんには参入障壁が低いと思われます。
各海外主要国では次々と大手ECモールが誕生し、越境ECは盛り上がりを見せていますが、日本製品を取り扱いたいという熱い思いはあっても、日系企業に十分にアプローチ出来ていなかったり、直送モデルしか用意がないために、日本との地理的距離が販売ロスにつながるとして日本企業と直接取引が難しかったりする場合が多いようです。越境EC大手のLAZADAでさえ直接契約している日本企業がなく、他の越境ECモールも日本企業の出店が50店舗ほどに留まるなど、まだまだ海外大手ECモールと日系企業の距離は遠いものとなっています。いきなり海外のECモールに出店(出品)するのはハードルが高いとして、両者を結びつける出店代行サービス業者や、ECサイト運用代行業者などを活用して越境ECに取り組むベンダーさんも数多くいます。
これまで越境ECの概観やビジネスモデルについて見てきました。越境ECは経済産業省が提唱したキーワードで、その市場は拡大の方向に向かってはいるものの、資料やデータが十分でなく、進出に二の足を踏んでいる日系企業も少なくありません。しかし、日本製品が欲しいという海外ユーザーの欲求は凄まじく、上手く舵取りすることができれば、日系企業は確実に販路を拡大できるでしょう。EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)も次々に締結され、国境をまたがる貿易取引の障壁は低くなっていきます。国内取引と同じ感覚で海外ビジネスができるのです。経済産業省の令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)によると、2019年に7,800億USドルと推計されていた世界の越境EC市場規模は2026年には4兆8,200億USドルにまで拡大する見込みで、今後も中国を筆頭にますます発展を見せることでしょう。通信インフラや物流レベルの向上も越境ECの促進に一役買っており、その成長率の高さには目を瞠るものがあります。あなたの企業も、是非この機会に越境ECに取り組んでみませんか?
この記事を書いた人
五条 司(ごじょう つかさ)
1992年4月20日生まれ。福岡県出身神奈川県育ち。慶應義塾大学文学部卒業。会社員を4年ほど経験するも働く場所と時間に囚われないノマドワーカーに憧れて2018年フリーランスライターに転身。学術記事やバックオフィス、ファッション、DX、アフィリエイト、医療、トラベルワーカーなど執筆ジャンルは多岐にわたる。日本ナレーション演技研究所基礎科所属。
自分を一言で表すと:見た目は女、中身は酒豪の九州男児