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世界のVAT解説:意外と安い東南アジアの消費税率も
2023.12.13
海外との売買取引でよく聞くVAT。Value Added Taxの略で、付加価値税とも呼ばれる税金の一種です。
VATは日本の消費税のように、EUやアジアなどの海外の国々で物やサービスを購買する際に課される間接税。
具体的にどんな時にVATが課税されるのか、そして税率が高い・安い国は…?
海外との取引で課税されるVATについて、これまで包括的に取り上げられることの少なかった東南アジア地域についても本記事では詳しく解説していきます。
本記事で提供している情報は、利用者の判断・責任においてご参照ください。現時点のできるだけ正確な情報提供を心掛けておりますが、本記事はあくまで参考資料であり、Shopeeおよび執筆者は利用者の確認不足によって発生したいかなる損失に対しても責任を負いかねますのでご了承ください。
*近年、頻繁に税制が更新されているため、公的機関による最新情報を必ず確認してください。 |
VATとは付加価値税とも呼ばれる税金の一種で、日本の消費税のように物やサービスを購買する際に課される間接税です。EUやアジアなどの国々でのビジネス活動に適用されます。
課税対象は、VAT対象国で行われる物品の販売やサービスの提供、対象国へ輸入された物品です。
VAT対象国でVATに登録をした事業者は、物やサービスを販売する際に商品価格にVATを加算します。こうして徴収したVATは、それぞれの事業者が確定申告の際に国内の税務当局に申告する仕組みです。
VATの税率は国によって異なり、商品科目によっては軽減税率が適用される場合もあります。特に、食品への税率は低く設定されている場合が多くなっています。
VAT(付加価値税)対象国で生じる物品の販売やサービスの提供、輸入された物品を購買する際に、消費者は事業者にVATを支払う必要があります。
VAT対象国とは、EU加盟国やアジア諸国など。EUでは全ての加盟国にVATの導入を義務付けています。アジア諸国でも、シンガポール、台湾、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インドネシアなど数多くの国で課税が義務付けられています。
なお、事業者の拠点がVAT対象国内になくても、VAT対象国でビジネス活動を行っている場合はVATの登録をしなければならないケースもあります。特に最近は越境デジタルサービスに対してもVATが課税対象となっている場合がありますので、拠点が国外にあってもVAT対象国でビジネス活動を行う場合には注意が必要です。
消費者が旅行者(非居住者)の場合、購入額が一定の基準額を越えていればVATが返還されるVAT還付制度もあります。
VATの還付方法は、商品を購入した店でパスポートを提示して免税手続き書類をもらい、最終出国空港で払い戻し手続きを行います。
なお、一部の国では還付制度を実施していない国もあります。また還付の対象とならない商品・サービスもあるため注意が必要です。旅行先でVATの還付を受けたい場合は、事前に対象国や要件を調べておくとよいでしょう。
またEUなら、EU加盟国以外の国の事業者で、現地で売上がない場合は負担した税額が還付されます。業務上の支出を現地で行いVATを支払った場合も、定められた期間内に必要な書類を揃えて提出すればVATの還付を受けられるケースもあります。
還付対象は国や用途によって規定が異なりますので、JETROなどの公的機関より最新情報を確認するようにしてください。
国によって税制が異なる消費税(付加価値税)。世界のどの国が税率が高く、どの国が安いのでしょうか?
消費税は、海外ではVAT、GST、営業税など国によって色々な呼称がありますが、ここではまとめて「消費税」として記載し、解説していきます。
消費税が高い国は下記の通りです。
最も税率の高いハンガリー(27%)に続くのは、福祉国家としても知られるスウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどの北欧諸国。続いて、ヨーロッパ周辺諸国が消費税が高い国として目立ちます。
1位 ハンガリー 27%
2位 クロアチア 25%
2位 スウェーデン 25%
2位 デンマーク 25%
2位 ノルウェー 25%
6位 アイスランド 24%
6位 ギリシャ 24%
6位 フィンランド 24%
9位 アイルランド 23%
9位 ポーランド 23%
9位 ポルトガル 23%
12位 イタリア 22%
12位 スロベニア 22%
14位 オランダ 21%
14位 スペイン 21%
14位 ベルギー 21%
14位 チェコ 21%
出典:全国間税会総連合会「世界の消費税(付加価値税)164か国」令和4年4月版
続いて、消費税が安い国は下記の通りです。
1位は台湾とカナダ。続いて、アジア諸国が目立ちます。
消費税10%の日本がトップ10入りするなど、世界基準で見るとアジア諸国は消費税の安い国が多いことに気づきます。
1位 台湾 5%
1位 カナダ 5%
1位 アラブ首長国連邦 5%
1位 バーレーン 5%
5位 モルディブ 6%
6位 タイ 7%
7位 スイス 7.7%
8位 シンガポール 8%
9位 スリランカ 8%
10位 日本 10%
10位 韓国 10%
10位 ベトナム 10%
10位 インドネシア 10%
14位 フィリピン 12%
15位 中国 13%
15位 ネパール 13%
出典:全国間税会総連合会「世界の消費税(付加価値税)164か国」令和4年4月版
* シンガポールは2023年より8%、2024年より9%となる。(JETRO)
上記のランキング表で太字となっている、台湾、シンガポール、タイ、フィリピンなどの税制については続きの章で詳しく解説していきます。
続いて、東南アジア諸国の消費税(付加価値税)について国別に解説していきます。
シンガポールではGSTと呼ばれる付加価値税。「物品・サービス税」を意味するGoods & Services Taxの頭文字から、GSTと呼ばれています。
2022年にシンガポール政府より税率の引き上げが発表され、2023年から2024年にかけて2段階で税率の引き上げ中となっています。
GST税率
GSTの課税対象は、基本的にシンガポール国内で販売されるすべての物品およびサービスです。ただし、商品の輸出や一部の国際サービスなど、課税の対象外となるものもあります。
なお、シンガポールのGST課税制度は近年頻繁に更新されており、2020年1月からは輸入サービス、2023年1月からは少額輸入物品や教育・フィットネス・遠隔医療等のライブ配信(BtoC)なども課税対象となりました。
シンガポール向けの輸入では、シンガポール税関により輸入通関時点で、原則的にあらゆる商品に対してGSTが徴収されます。
輸入品においてGSTが非課税になるケースもあり
など、輸入時点でのGSTの徴収が猶予または免除されることもあります。
GSTは登録制です。GSTの登録申請をして承認されれば、GST登録事業者となります。1年間の課税売上高が100万シンガポールドルを超える事業者はGSTの登録が必須ですが、自主的に登録申請を行うことも可能です。
GST登録事業者は、消費者に販売した商品やサービスにGSTを加算できます。GST加算の際には、一定の要件を満たしたTax invoiceを発行しなければならず、3ヶ月ごとにGSTの申告・納付が必要となります。
台湾のVATは「営業税」という名称で、税率5%です。世界でもトップクラスに低い税率となっています。
課税対象は、台湾国内で販売されるあらゆる物品、サービス、および輸入品となります。
台湾のVAT課税はインボイス制度により運用されています。事業者は、台湾の税務署で購入したインボイス「統一発票」を発行する必要があります。
統一伝票とは、台湾のインボイス制度に基づいた公的な領収書、いわゆるレシートです。台湾らしく面白いのは、この統一伝票に宝くじの番号がついていること。
以前は統一伝票を通さずに物品・サービスを販売する脱税が多発していたため、台湾政府が統一伝票に8桁の宝くじの抽選番号をつけました。以降は、消費者が宝くじのついたレシートを欲しがるようになり脱税防止につながったようです。
VATを徴収した事業者は、原則として2ヶ月分を一括して、期間終了後の15日までに申告・納付する義務があります。
なお、事業者は事業を開始する前に営業税登録が必要です。
タイのVAT(付加価値税)は7%。先述の消費税が安い国ランキングでは、アジア地域において台湾に続く低い税率となっています。
タイ国内における物品・サービスの販売および国外からの輸入に対して課税されます。
近年、タイ国内のITインフラが急激に整備されてきています。それに伴い、2021年に歳入法が改正され、海外からのオンラインサービス販売もVATの課税対象となりました。
国外からタイ国内向けにオンラインサービスを提供する「E-Service」(ECプラットフォーム、モバイルゲーム、動画配信サービスなど)において、物品と同様に、VATの課税義務があります。該当するオンラインサービスを提供する事業者は、拠点がタイ国内になくともE-Service提供者として納税登録をする必要があります。
VAT登録業者は、毎月末にVATの計算を行い、基本的には翌月の15日までに申告・納税を行わなければなりません。(一部、例外のケースを除く)タイでもTax Invoice制度があり、VAT登録業者は取引の際には必ず、販売した商品・サービスの価格やVAT金額などを詳しく記載したTax Invoiceを発行しなければなりません。このTax Invoiceは、税金還付請求のための証拠書類となります。
なお、物品やサービスの販売を継続的に行い、年間180万バーツを超える収入があるすべての事業者にVAT納税義務があります。事業者は、事業開始前または収入が規定額に達した日から30日以内にタイ税務署で納税登録をする必要があります。この登録ができていないと控除や還付手続きができないので注意しましょう。
フィリピンのVATは12%。フィリピン国内での物品の販売や不動産のリースなどのサービス提供、そしてフィリピン国内向けの輸入に対して課税されます。なお、農作物・海産物、専門家による医療サービス等については一部免税措置がとられています。
年間売上高が 300万ペソを超える事業者は VATの納税義務があります。
フィリピンでは2023年1月より新税法が施行され、VATの申告・納税は四半期ごとに変更となりました。以前は四半期ごとの申告で毎月の納税義務があったため、事業者にとって手続きが楽になりました。
新税法では、VATの申告は四半期ごとに、納税は四半期末の翌月25日までに終わらせる必要があります。
マレーシアの消費税は、販売する商品や製造ルートによって「売上税(Sales Tax)」と「サービス税(Service Tax)」の2つに分かれます。売上税とサービス税を総称してSSTと呼びます。
以前はGST(物品・サービス税)の1種類だけだったのですが、政権交代に伴い2018年にGSTは廃止され、現行の税制に切り替わりました。
売上税の税率は5%または10%で(石油製品を除く)、対象商品は物品です。
課税対象となる物品
売上税には、仕入税額控除のような仕組みはありません。その代わり、課税事業者が材料等を輸入または他の課税事業者から購入する場合には、免税を適用することができます。
さらに売上税の対象外となる地域もあり、下記の地域では原則として売上税の課税対象外となっています。
将来または過去12ヶ月に課税物品の売上が50万リンギを超える製造業者は、課税事業者登録を行わなくてはなりません。該当する事業者はマレーシア国内外を問わず納税義務者となり、登録販売者(RS)として税関に届け出を行う必要があります。
なお、課税事業者は2ヶ月の課税期間ごとに、課税期間終了日から1ヶ月以内に売上税の申告と納付が義務付けられています。
サービス税の税率は6%、課税対象はサービスの提供です。
課税対象となるサービス
将来または過去12ヶ月における課税サービスの提供が一定額を超えるマレーシアの事業者は、課税事業者登録を行う必要があります。課税事業者は、2ヶ月の課税期間ごとに、課税期間終了日から1ヶ月以内にサービス税の申告・納付が義務付けられています。
なお、2020年1月からは、マレーシア国外からのデジタルサービス提供もサービス税の課税対象となりました。年間のデジタルサービスの売上が50万リンギを超える国外のデジタルサービス提供者は、マレーシアにおいて課税事業者として登録しなければなりません。
課税事業者は、3ヶ月ごとの課税期間の終了日の翌月末日までに、当該課税期間にかかるデジタルサービス税の申告・納税を行う必要があります。
以上、世界や東南アジアのVATについて包括的にご紹介しました。
ヨーロッパ諸国と比べて税率もお手頃な東南アジアにビジネスチャンスを感じた方も多いのではないでしょうか?
VATは、商品やサービスを購入した時にその商品の付加価値に税を課すという性質のもので、消費という行為に課税されます。関税との大きな違いは、輸入関税は相手国の税関に到着した時点で発生するのに対し、VATは消費者に購入された時点で発生するという点。
販売事業者は、消費活動で生じたVATを国に代わって消費者から預かり、後日まとめて消費者が居住する国に納めます。
自社のECサイトで越境販売を行う事業者の場合、消費者が居住する国によって異なる消費税率が適用されるように細かくシステムを構築する必要があります。昨今、変動の大きな国際情勢の中で、税制変更をうっかり見落としてしまう場合もあるかもしれません。
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この記事を書いた人
Natsuko Sakurai
2拠点生活フリーランス。ロンドン、オランダ、スペイン 3ヵ国での在住や現地企業での勤務経験があり、帰国後も海外ビジネスに関わり続けています。コロナ禍をきっかけに、海外にしかオフィスのない現地企業との国際リモートワークが始まったりと、たえず働き方は進化中。