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越境ECの成功事例とは?日本企業の事例やメリット、注意点まで徹底解説
2023.03.13
「越境ECのさまざまな成功事例を参考にしたい」
「越境ECで成功するためのポイントや注意点を知りたい」
越境ECの運営を行う際、上記のように考えるケースも多いのではないでしょうか。
越境ECを始めるに当たり、販売国の言語や文化の理解、決済や配送方法の検討など、幅広い課題と向き合う必要があります。課題を解決するには、過去に越境ECを開始した成功事例から学ぶことが最も重要です。
当記事では、越境ECにおける日本企業の成功事例について、複数の分野から解説していきます。越境ECの成功事例からみる注意点やポイント、おすすめのプラットフォームまでご紹介しているため、合わせてご参照ください。
越境ECとは、国境を越えたインターネット上の商取引のことを指します。基本的には、日本の事業者がアメリカや東南アジアなど国外の消費者に対して、ECサイトやモールを通して商品を販売していきます。
過去には日本を訪れた観光客が日本製品を購入し、帰国後にECサイトからリピート購入をするという流れが一般的でしたが、コロナ禍からインバウンドが回復してきたため、再び越境EC市場が盛り上がってきています。
経済産業省による令和3年度の調査によると、世界的な越境ECの市場は2019年で7,800 億米ドル(約103兆円・市場規模推計値)、2026年には4兆8,200億米ドル(約639兆円・予測推計値)の規模にまで拡大すると予測されています。
参照元:令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書|経済産業省
同様のデータによると、日本国内のBtoCにおけるEC市場規模は2021年でおよそ20.7兆円。国内の市場規模と比較しても、世界的な越境ECの市場規模が遥かに大きく、今後も更に拡大していくことが想定されます。
近年越境ECの市場規模が急激に拡大している要因として、コロナ禍による巣ごもり需要の増加が挙げられます。世界的にも外出が制限され、インバウンド市場が著しく低下しECサイトでの販売は飛躍的に拡大しました。
また、世界各国でスマートフォンが広く普及したことも、越境ECの市場拡大に拍車をかけてきました。スマートフォンさえあればいつでも簡単に世界各国の商品を検索し、購入できるようになったため、より幅広いユーザーにアプローチをかけられます。
ちなみに現在は国境再開でインバウンド需要も戻りつつあるため、別の角度から市場は再び盛り上がりを見せています。
越境ECのメリットは以下の3点に分けられます。
ここではそれぞれのメリットについて詳しくみていきましょう。
越境EC最大のメリットは、日本国内よりも遥かに大きい市場で商品を販売できること。
アメリカや東南アジア、中国など、EC市場の拡大が著しい国の消費者に対して商品をアプローチできるため、日本国内に留まるよりも効果的に売上増加が期待できます。
海外では、日本製品の品質や安全性が高く評価されています。また、さまざまなブランドの海賊版商品が出回っていることもあり、日本企業が直接自社商品を出品しているという事実が強みとなり、消費者からの信頼を獲得できます。
海外向けの商品販売を行う場合、従来は現地で実店舗を構えるための大きなコストが必要でした。そのほかにも、従業員の採用から在庫の運搬まで様々なリスクを抱えるケースも珍しくありません。
しかし、越境EC販売であれば実店舗運営にかかるコストを排除し、低い投資額から安心して事業を進行することができます。自由に海外へ向けた商品販売が可能で、低コストのため施策のテストも柔軟に行えます。
越境ECのデメリットは下記の2点となります。
越境ECの場合、海外に向けて商品発送を行うため、国内でのEC運営と比較すると数倍の配送コストがかかってきます。
配送料をおさえようとすると、その分の費用を商品価格に上乗せするなどの対策が必要ですが、それでも総合的なコストは変わりません。コストの大きさから、消費者が商品購入を躊躇してしまう可能性も十分考えられます。
消費者が安心して商品購入ができるよう、コストの調節に取り組みつつ越境ECを展開する必要があるため念頭に置いておきましょう。
越境ECの展開で大切なのは、販売国の言語や法規制、文化などについて入念に学習し、それらに則ったサイト運営をすることです。
例えば、A国には発送できる商品がB国にはできないというケースも少なくありません。そのため、検討している販売国で自社商品が発送可能かどうか、ニーズと合わせて調査することが重要です。
また、国によって普及している発送業者や決済システムも異なるため、導入時にはよりユーザー数の多い最適な方法を把握しておきましょう。
東南アジア各国の国別動向について、詳しくはこちら
これまで様々な分野に精通する日本企業が越境ECに挑戦し、成功をおさめています。
以下では、越境ECにおける日本企業の成功事例について、複数のケースを紹介していきます。
日本でも高い人気を誇るアパレルブランド「ユニクロ」。主にヨーロッパ圏を始め、ラトビアやリトアニア等のエストニア周辺からアメリカ、中国まで幅広い国々に事業展開をしています。
コロナ禍の影響から、2020年3~5月期の越境EC事業では前期と比較して約45%ほどの売上減少があったものの、「エアリズムマスク」といった新商品の展開から中国を中心に売上回復を果たしています。
アフターコロナにおいても、ユニクロ商品ならではの信頼性や品質の高さが海外で注目され続け、売上の安定化に繋がった事例と言えます。
「多慶屋」は東京・御徒町に店舗を構えるディスカウントショップで、年間約43万人もの観光客が来店するほどの人気店です。
越境EC事業では、一度来店したユーザーに帰国後に商品をリピート購入してもらえるよう、代理購入サービス「Buyee(バイイー)」と連携して越境向けのECを構築。
実店舗に来店したユーザーに向けては、ECサイトのURLやQRコードが記載されたチラシを配布し、気軽に継続購入が可能な導線を作っています。
また、中国の大型ECモール「アリババ」による決済システム「アリペイ」を日本で先駆けて導入し、より中国観光客が気軽に購入できるよう施策を講じた点も同社の魅力です。
「オタクモード・ドットコム」は、日本のアニメやゲームなどの関連グッズを海外ユーザーに向けて販売している越境ECサイトです。
同サイトの特徴は、日本のオタク文化が好きな海外ユーザーでも手軽にグッズ購入ができるように、環境整備をおこなった点にあります。ニーズにあった分野を越境ECによって開拓し、アメリカやカナダ、フランスなどの欧米圏を中心として幅広い国々で売上を伸ばした成功事例と言えるでしょう。
またSNS集客においては、主にFaceBook上で日本のポップカルチャー情報を配信し、FBページでは2000万「いいね!」を獲得。海外ユーザーがECサイトへ来訪できるように導線を作りあげています。
山ト小笠原商店が運営するECサイト「北海道お土産探検隊」では、「六花亭」や「ロイズ」といった定番のお土産品を越境ECで販売し、大きな成果を挙げています。
当サイトの特徴は、外国語担当者のいない状況から「翻訳機能」を活用して自力で海外ユーザーとのやり取りを継続した点にあります。専門知識を所有しない環境においても、配送の手間や言語上の障壁を一から突破し、売上に繋げた成功事例と言えるでしょう。
やがては、ITノウハウに乏しい環境から楽天市場での出店も果たしたり、中国・英語・日本語に精通した中国人スタッフを採用したりと、受注対応やページ制作等の施策にも尽力して更に売上を伸ばしています。
「SAMURAI STORE」は、元eBay社員の桐田敏彦氏によって開設された、「本物の鎧兜」を専門に扱うECサイトです。
世界的にも人気の高い商品に焦点を絞ることで、独自の販売経路とリピーターを獲得した成功事例となります。
ECサイトの開設年度は2002年。越境ビジネスの黎明期から、販売経路の未開拓だった甲冑をいち早く取り上げた点が大きなポイントと言えるでしょう。
「CD Japan」は、ジャパンカルチャー関連のアイテムを扱うEC事業を20年以上展開しています。
独自の倉庫システムを構築しているため、効率的かつスピーディな物流環境が整備されているのが特徴。そして、同サイトにおける「丁寧な梱包」については海外ユーザーからも高い評価を受けています。
更にCD Japanで購入することでポスターや写真、マウスパッドなどサイト限定の特典を付与することで付加価値をつけています。
ここでは上記でご紹介した成功事例をもとに、越境ECを展開する上でのポイントや注意点について解説していきます。
越境ECで最も重要なのは、販売国のニーズに合わせて商品販売を行うことです。たとえ国内で高い売上を誇る自社商品でも、販売国の選定を誤ると全く興味を持たれないケースも珍しくありません。
既に商品を所有している場合は、そのニーズを調査した上で最適な販売国を選定しましょう。また、商品選定から始める際にも、販売国のニーズと組み合わせを考慮する必要があります。
販売国や地域によって、ユーザーが使用しやすい決済システムは異なります。例えば先進国の場合はクレジットカードの普及率が高いですが、中国では銀聯(ぎんれん)のような現地のブランドが信頼されています。なるべくユーザーが商品購入をしやすいように、幅広い決済手段の導入を検討しましょう。
また事業者の視点では、クレジットカードの不正利用といったトラブルも念頭に入れて対策を打つ必要があります。不正利用が生じれば、そのぶんの利益損失が出てしまうため、事前に対応策を調べておくのがおすすめです。
越境ECでは、商品発送の際に販売国の法規制について正しく把握しておく必要があります。日本国内の流通では当たり前のことが、海外では違法行為に該当したり、罰金の対象になったりする危険性もあるためです。越境EC運営を始める前に、必ず販売国の法規制を調査した上で安全に商品販売をスタートしましょう。
また、関税が発生する点も考慮しておきましょう。関税は地域や商品ジャンルによって金額が異なるため、事前に把握して、ユーザーにも分かるようにサイト上へ情報を記載しておけば、発送時のトラブルを回避しやすくなります。
越境ECで安定した新規顧客やリピーターを獲得するためには、それぞれのユーザーに応じた集客対策を講じる必要があります。
見込み客に自社商品の情報を伝える「認知段階」では、現地のインフルエンサーを通して、SNSや動画投稿サイト上から宣伝を行うのも有効です。また、自社SNSやYouTubeアカウントで商品紹介をしたり、各媒体で広告を打つのも良いでしょう。
ユーザーがECサイトに来訪し、商品購入をした段階では、今後もリピートしてもらえるような対策を講じていきます。口コミ投稿やSNSでの拡散をしたユーザーに割引クーポンを発行するなど、リピートへのきっかけとなるキャンペーンを提供するのがおすすめです。
上記のように、新規顧客獲得からリピート化までのサイクルを循環させ、顧客数を安定化させていきましょう。
販売規模が大きくなる場合は、現地の流通に特化したコンサルタントを導入したり、現地の文化に詳しいスタッフを配置したりといった対策も重要になります。
現地ユーザーとのやり取りや物流などの業務フローが正しく整備できれば、無駄なコストを減らし、トラブルの少ない運営が可能となります。
越境ECでは、自社商品の特製や販売国の環境に合わせた、適切なプラットフォームの選定が大切です。
以下では、越境ECにおけるおすすめのプラットフォームを紹介していきます。
「Shopee」は、東南アジア・台湾で最大規模のモール型ECプラットフォーム。日本からシンガポール、台湾、タイ、マレーシア、フィリピンの5つのマーケットへの越境ECに対応した巨大ECモールであり、2021年度ショッピングアプリランキングでは世界第1位を獲得するほどの知名度を誇っています。
初期手数料は無料のため、はじめて越境ECに挑戦する場合でも気軽に出店を行えます。購入者とのやり取りで困りごとが生じれば、いつでも質問対応やサポートを受けられます。
また、国際送料の一部をShopeeに負担してもらえたり、フルフィルメントに対応してもらえたりなど、配送についても手厚いサポートを提供しています。販売国の文化や言語に疎い場合や、海外販売の経験がない状況でも、安心して越境ECをスタートできるのがShopee最大の魅力と言えるでしょう。
「Launchcart」は自社ECカートの構築プラットフォームで、アジア向け越境ECに特化して高い人気を誇っています。現地の法規制や商習慣に合わせて最適な商品販売のアプローチが可能です。
Launchcartの大きな特徴は、単品通販と総合通販の両方が行えること。単品通販では、現地に最適化されたフォーム一体型ランディングページの作成が可能で、定期購入や広告効果測定などの本格的な施策にも対応しています。
また、世界通貨の160種類に切り替えできる点も魅力的なポイントです。それぞれの国に最適な言語や決済対応も可能であるため、難しい知識もなくスムーズに越境ECがスタートできます。
「Shopify」は、全世界175か国でおよそ380万店舗以上ものストア開設実績を誇る自社ECカート型の人気プラットフォームです。(Genus AI取得データ参照)
Shopifyの大きな特徴は、月額利用料金のみの低コストで、本格的なネットショップ運営が可能な点にあります。幅広いデザインテンプレートが存在しているため、コーディングやプログラミングスキルのない方でも、商品ジャンルや運用環境などに合わせて優れたECサイトデザインを行えます。
またアプリケーションによる拡張性の高さも魅力的なポイントです。決済システムや物流整備、多言語化、ドロップシッピングといったさまざまな機能がアプリケーションを導入するだけで自由に導入可能となっています。
今回は越境ECの成功事例やポイント、注意点、おすすめのプラットフォームまで幅広く解説しました。
越境ECを展開することで、必要最低限のコストで幅広い国々のユーザーに対してアプローチが行えます。コロナ禍においてジャパンブランドの信頼性や安全性は更に向上し、今後も更に海外ユーザーからのニーズは高まるでしょう。
越境ECを成功させるためには、過去の日本企業の事例から自社と類似するポイントを抽出して取り入れることが大切です。多彩な商品ジャンルや販売国で事業展開を行うサイトが存在するため、今回紹介した越境ECの成功事例をぜひご参照いただき、自社商品の売上を向上させていきましょう。
この記事を書いた人
木村 祐亮(きむら ゆうすけ)
主にECプラットフォーム・金融関係の記事を執筆しているフリーランスWebライター。アナログイラスト制作やネットショップ運営も行う。
自分を一言で表すと:マイペースな不器用