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東南アジアの最新物価事情:日本との価格差でビジネスチャンス到来
2023.12.12
ここ数年、世界経済における各国の立場が急変しています。
IMF(国際通貨基金)によると、日本の2023年度の名目GDP(国内総生産)は55年ぶりにドイツを下回って4位に転落する見通しです。日本経済の長期的な低迷や世界における競争力の低下が現れる結果となりました。
日本経済の弱体化に伴って、各国との物価とも価格差が現れはじめています。
そこで注目なのが、近年、勢いのある経済成長を続けている東南アジア諸国。
東南アジアといえば、これまでは物価が安く経済も発展途上のイメージが強かったのですが、ここ数年で取り巻く状況も急変しています。活発化している経済成長にあわせて、現地の物価も以前とは大きく変化しています。
本記事では、東南アジア諸国を取り巻く最新の物価事情をわかりやすく解説していきます。
本記事で提供している情報は、利用者の判断・責任においてご参照ください。
現時点のできるだけ正確な情報提供を心掛けておりますが、本記事はあくまで参考資料であり、Shopeeおよび執筆者は利用者の確認不足によって発生したいかなる損失に対しても責任を負いかねますのでご了承ください。 |
かつては物価が安いと思われていた東南アジア。しかし、近年における東南アジア経済の成長スピードは凄まじく、かつての日本の高度成長期を彷彿とさせるほど。
事実、IMF(国際通貨基金)より公表された2022年の1人当たりGDPでは、ついに日本は台湾に追い抜かれてしまいました。またシンガポールでは、日本の倍以上の数値となっています。
2022年度 1人当たりGDP
ちなみに、10年前の2012年は、日本の1人当たりGDPは台湾の2.3倍ありました。
2013年から2019年にかけて円安が進み、世界経済における日本の立場は顕著に低下しました。その後、コロナ禍の2020〜2021年に台湾経済が成長し、翌年には日本を追い抜きました。
台湾だけでなく、コロナ禍前後に急速な経済成長を遂げた東南アジア諸国も多く、同時に現地でも物価も上昇しています。こうした国々での物価は大きな転換期を迎えているので、最新情報に注目する必要があります。
ヨーロッパやアメリカでは2021年から物価上昇が目立っていましたが、こうしたインフレの波は東南アジアにも到来しています。
JETRO「ビジネス短信」によると、2022年におけるASEAN諸国の消費者物価指数(CPI)上昇率は下記の通り。(前年比)
ASEAN諸国の消費者物価指数(CPI)上昇率(2022年度)
タイやシンガポールではCPI上昇率が6.1%となるなど、大きな上昇が目立っています。
ちなみに、日本におけるコアCPIの上昇率は2021年は0.5%、2022年は2.8%。経済成長ではなく、資源価格の高騰や円安などの外的要因で1991年ぶりの物価上昇となりました。現在の日本の物価上昇率は、タイやシンガポールに比べると半分以下となっており、いかに東南アジアの物価に勢いがついているのかわかります。
また、JETROが公表した下記のグラフからも、東南アジア各国で消費者物価指数(CPI)とコアインフレ率が上昇していることが見て取れます。
出典:JETRO「ビジネス短信」
東南アジアの物価を考える時に忘れてはならないのが、貧富の格差。
東南アジアの多くの国々では、日本より貧富の格差が大きい傾向にあります。その理由となっているのが、東南アジア諸国の社会構造です。
主に、下記のような要因で貧富の格差が大きく開いています。
東南アジアでは富裕層の裾野がとても広いことが特徴です。日本の富裕層とは一線を画し、自分の娘のために百貨店を建設してしまう人がいるなど、飛び抜けた資産を有する富裕層の人たちも珍しくありません。
もちろん、以前と変わらず安い物価で暮らす消費層もいるのですが、経済成長を続ける東南アジアでは中間層〜富裕層の所得の急増により購買力も勢いを増しています。
こうした背景から、東南アジアでは同じ国内でも消費者層(=所得レベル)によって物価に価格差が生じています。例えば、これまで「安い」というイメージの強かったタイやフィリピンなどでも、日本よりはるかに高額な家賃のアパートなども増えています。と同時に、低所得者層が暮らすのは昔ながらの簡素で安価な家。
この点は、どの地域・消費者層でも物価に大差がない日本とは大きく異なる点となります。
ですから、東南アジアでは低所得者層に向けた商品は物価が安く抑えられていますし、中間層〜富裕層に向けた商品の価格は日本以上に高額で取引されることも珍しくなくなりました。
東南アジアの物価において「どの消費者層に向けた商品なのか?」というマーケティング的な視点を持つことにより、その国の物価の動向をより正確に捉えられるようになります。
物価上昇が続く東南アジアで、日本の商品はどのくらいの価格で販売されているのでしょうか?
東南アジア諸国に幅広く店舗を展開しているユニクロの商品価格で比較してみました。
比較商品:エアリズムTシャツ半袖
*価格は2023年11月現在、ユニクロWebサイトに掲載の情報に基づきます。同じ商品の取扱いがない場合は、類似の商品で比較しています。
日本: 990円(商品)
台湾: NT$390 / 約1823円(商品)
タイ: THB490.00 / 約2079円(商品)*AIRism Cotton Short Sleeve T-Shirtにて比較
フィリピン:PHP590.00 / 約1620円(商品)*AIRism Crew Neck Short Sleeve T-Shirtにて比較
シンガポール:S$19.90 / 約2211円(商品)*AIRism Seamless Boat Neck Long T-Shirtにて比較
マレーシア:RM39.90 / 約1284円(商品)*AIRism Crew Neck Short Sleeve T-Shirtにて比較
*為替レートは2023年11月8日時点のレートを適用
同一商品の取扱がなく類似のエアリズムTシャツでの比較になっている場合もありますが、どの国の販売価格をみても日本との価格差は大きく、日本より高値で販売されています。
例えば、1人当たりのGDPが日本を追い越した台湾では、同じTシャツが約1.8倍の価格で販売されています。
昨今の経済成長に加え、こうした価格差を見ると、東南アジア向けの越境販売にビジネスチャンスがあると感じる方も多いのではないでしょうか?
また、大幅な円安傾向が続く昨今では、海外の消費者にとって日本からの越境EC商品の価格は以前よりも買いやすいものとなりました。東南アジアの経済成長による物価上昇に加え、円安も日本からのビジネスチャンスを押し広げていると言えるでしょう。
ここ数年で東南アジアの物価が急上昇していますが、今後はどうなるのでしょうか?
東南アジア5カ国(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム)の経済において、2022年はコロナ規制の緩和に伴う経済活動の正常化やインバウンド需要の回復により、景気が順調に推移していました。2023年は、世界経済の減速や財政の主力となる輸出ビジネスの減速により、東南アジアの経済成長も緩やかになる見込み。
とはいえ、JETRO「ビジネス短信」によると2023年2月度の消費者物価指数(CPI)上昇率(前年同月比)はシンガポール6.3、インドネシア5.47、フィリピン8.6でした。成長が緩やかになったと言われるタイでも3.79と引き続き日本の数値を上回っています。
コロナ規制緩和直後の勢いは落ち着きましたが、今後も堅調に経済成長していくのではないかと予測されます。
こうした背景から、低迷する日本経済と堅調な成長を続ける東南アジア経済との間に差が生まれることは否めません。
東南アジアの経済成長による物価上昇だけでなく、止まらない円安傾向も重なって、今後もますます日本と東南アジア諸国の価格差は広がっていくのではないかと考えられます。
以上、最新の東南アジアにおける物価事情をご紹介しました。
物価の上昇に加えて、昨今の円安傾向により、日本と東南アジアの価格差は広がる一方。この価格差を利用して、日本から東南アジアへの輸出ビジネスにチャンスが到来しているともいえます。
日本経済の低迷により、国内の物販は市場の動きが鈍化していますし、少子高齢化により若い消費者が少なくなってきています。日本国内向けの物販ビジネスにおいては、今後は期待よりも不安要素が増える一方です。
国内市場に壁を感じているのなら、今後も経済成長が期待される東南アジア向けに越境販売を始めてみるのもいいかもしれません。
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この記事を書いた人
Natsuko Sakurai
2拠点生活フリーランス。ロンドン、オランダ、スペイン 3ヵ国での在住や現地企業での勤務経験があり、帰国後も海外ビジネスに関わり続けています。コロナ禍をきっかけに、海外にしかオフィスのない現地企業との国際リモートワークが始まったりと、たえず働き方は進化中。