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越境ECで中小企業が直面しがちな課題とは?解決策も紹介
2023.05.19
急成長が続く越境EC市場。世界各国を相手にできる越境ECはビジネスチャンスが多いのですが、「海外に向けたEC販売」と聞くと少し不安に思う方もいるかもしれません。
しかし、つまずきがちなポイントに共通点も多く存在するため、課題を事前に把握しておけば回避できる問題もあるものです。
本記事では、中小企業が直面しがちな課題と具体的な解決策について詳しく紹介していきます。
越境ECにおいて、日本企業はどのような状況に置かれているのでしょうか?
まずは日本企業における越境ECの現状について、データとともに読み解いていきます。
世界の越境EC市場は拡大を続けていますが、日本企業の現状はどうなのでしょうか?
JETRO(日本貿易振興機構)が2022年に行った「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、販売チャネルとしてECを利用したことがある企業は全体のわずか35.5%でした。その中で、越境ECを利用して日本から海外へ販売をしたことのある企業は、半数以下の45.6%。
EC展開をする日本企業の少なさに加え、越境ECに着手している企業はまだ限られていることがわかります。
日本企業の越境EC展開はあまり進んでいるとは言えない状況です。
次に企業規模の観点から、販売チャネルとしての越境ECについて分析していきます。
JETROによる同調査では、ECを販売に利用したことのある大企業は31.3%、中小企業は36.2%でした。その中で越境ECを活用している大企業は37.9%に留まり、中小企業の46.7%と10%近い差があります。
また、今後の利用についても「利用を拡大する」「今後、さらなる利用拡大を図る」と回答した企業の割合は中小企業が大企業を上回っています。
2022年度 ジェトロ海外ビジネス調査「日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査」より抜粋
さらに、同調査でECを利用中の企業のうち65.5%が、海外向け販売でも「ECを活用中または利用を検討している」と回答しています。7割弱の企業が海外向けのECに前向きな反応を示したということになります。
ECを利用中の企業のうち、海外拠点での販売も展開するのは中小企業が21.4%だったのに対し、大企業は44.6%。2倍以上の差がつく結果となりました。大企業は海外拠点での販売に力を入れている一方で、中小企業は越境ECに注力していることが読み取れます。
注目すべきは、ECの利用について「今後も利用する予定はない」と回答した大企業が、なんと52.4%にのぼること。日本の大企業の保守的な傾向が伺えます。
海外向けの販売でECの活用の興味が高まっているにも関わらず、今後も越境ECへの進出が遅れそうな大企業。つまり、中小企業に大きなチャンスが残されていると言えるでしょう。
東南アジア・台湾で最大規模の越境ECプラットフォーム、Shopee。越境ECに積極的な日本企業も多く抱える日本法人、Shopee Japanでは「越境ECの2022年の総括及び2023年の展望調査」を実施しました。越境EC事業の担当者111名に対して、日本企業の現状や課題について最新の動向を調査しました。
次が、本調査における「越境ECを開始した理由・目的」に関する回答です。
Shopee Japan株式会社 「越境ECの2022年の総括及び2023年の展望調査」
半数近くの46.8%をマークしたのが「リピーターの定着」。これは、日本での観光中など、何らかの理由で一度自社の商品を購入した海外顧客のリピーター化を指しています。
マーケティングにおいて、新規顧客を獲得するよりもリピーターを定着させる方が労力が少ないと言われています。この調査から、効率よく収益を上げられるリピーター客を逃さないようにしたい、という企業の意向が伺えます。
また、別の調査でも外国人の訪日経験と越境ECには密接な関係があることがわかっています。
BEENOS株式会社がアメリカ、台湾、マレーシア、イギリスの約1,900人に向けて実施した調査では、「訪日時のお買い物の際に、店頭での購入だけでなく、ECも活用したいですか?」という質問に、全体の56%以上が「ECも活用したい」 と回答。
さらに「訪日後、越境ECで気に入った商品などをリピート買いしたいですか?」という質問には、全体の92%以上が「越境ECでリピート買いしたい」と回答しています。
つまり、外国人観光客が日本を訪れた後も、日本商品をリピート買いしたいというニーズが高いことがわかります。
その他、前述のShopee調査において、越境ECを開始した理由・目的として目立ったのは下記の理由です。
その他、自由回答では「既存事業の不振」や「為替相場の関係により」など、現在抱える課題の打開策として越境ECを開始した企業もありました。
インバウンドによる購入の定着、新しい販路の拡大、為替相場など、企業が抱える様々な状況に応じて越境ECに乗り出していることがわかります。
次に、越境ECに興味のある日本企業の動向を見ていきます。
JETROの「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(2022年)における、今後のEC販売拡大・新規販売先国・地域についての回答は下記の通りとなりました。
2022年度 ジェトロ海外ビジネス調査「日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査」より抜粋
2022年における最新の調査結果では、ASEANや東アジアを選ぶ企業が目立ちました。
ASEAN(東アジア諸国連合)はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、ラオス、ミャンマー、カンボジアの10カ国、東アジアは韓国、台湾、香港をそれぞれ指します。
前回までの調査で圧倒的な存在感を示していた中国を選んだ企業は29.5%と大きく減少し、越境EC市場が急速に変化していることを感じずにはいられません。
2022年度 ジェトロ海外ビジネス調査「日本企業の海外事業展開に関する アンケート調査」より抜粋
なお、既に中国でECを利用している企業は、今後は中国やASEAN、東アジアで販売を拡大していくとの声が目立ちました。
中国で既に越境ECを展開している日本企業にとっても、ASEANや東アジアといった市場は魅力的であることがわかります。
近年、急成長を遂げているASEANや東アジアにおけるEC市場の広がりが、こうしたデータに反映されているといえるでしょう。
ここまでに日本企業を取り巻く越境EC市場について解説してきましたが、実際に企業が直面する課題とはどんなことなのでしょうか?
Shopee Japanが、すでに越境ECを展開中の日本企業に対して行った調査が示す「越境ECの課題」は下記の通りです。
Shopee Japan株式会社 「越境ECの2022年の総括及び2023年の展望調査」
回答した企業の半数以上が「サポート対応が難しい」、続いて「配送料、手数料が高い」「外国対応ができるスタッフの確保」などの課題を挙げました。
顧客と直接顔を合わせないECの特性や、外国語による対応を乗り越える必要がありそうです。
日本の大企業は、なかなか越境ECに進出してこない。越境EC市場は急成長中で、中小企業に大きなビジネスチャンスが残されている……。
越境ECに興味はあるものの、どんな問題が起きるのか気になって進出に足踏みしている企業も多いのではないでしょうか。
ここからは、越境ECでありがちな課題と解決策を紹介します。人材もリソースも限られる中小企業だからこそ、事前に課題と解決策を知っておく。そうすれば、できるだけ無駄を抑えた戦略が立てられるでしょう。
インターネットがあり、商品配送が許されている国なら世界中どこへでも販売可能な越境EC。広大な越境EC市場の中から、自社に合った販売国やターゲットを選ぶことは容易ではありません。
選択肢が多すぎて、うまくターゲットを絞り込めずに悩むこともあるでしょう。さらに、現地の市場調査も課題の一つです。
前述の「そもそも越境ECの開始目的は?」の章で、インバウンド客が越境ECのリピーターとなる可能性が高いとお伝えしました。
それならインバウンドの傾向を参考にすれば、どんなニーズがあるのか知ることができます。
すでに自社商品を購入する外国人客がいるなら、購入者の国籍、年代、購入頻度などの情報を洗い出してみましょう。自社の情報がなければ、競合他社や類似品の傾向を調査しても良いでしょう。
ニーズがどこにあるのか分かれば、どの国のどんな層をターゲットにすべきか、ある程度見えてきます。
販売国を決める際には、その国の越境EC市場規模や成長率も考慮することが大切です。
また、市場規模だけを見るとアメリカと中国が大きいですが、「訪日客の多さ」「現地在住の日本人の多さ」「日本語が通じやすい」などの観点から考えるとシンガポールや台湾は日本企業にとって進出しやすいマーケットとなります。
特に中小企業の場合、ライバルの多い市場で労力をかけて何とか生き残るよりも、進出コストの少ない市場を選ぶこともおすすめ。
市場が大きく成長中の国や日本製品のニーズが高い国にターゲットを絞り、すでにある「波に乗る」ことを意識しながら展開計画を立てるのも、中小企業には向いています。
初めての越境ECでは、海外に向けて商品をどう販売すればよいのか分からないという課題もあります。
自社のECサイトを翻訳するだけでは現地のニーズを掴みきれず、十分な集客を行うのは難しいでしょう。
集客がなく、商品の販売が難しい。そんな時には、越境ECプラットフォームが役立ちます。
主要なセール時期や商習慣も異なる海外。こうした情報を収集するだけでも中小企業にとっては一苦労です。リソースが限られている中小企業だからこそ、現地の事情に精通した越境ECプラットフォームを活用すれば業務が効率化できます。
越境ECプラットフォームは、オンライン上のショッピングモール。今は現地での知名度がなくても、ショッピングモールの訪問客が回遊して自店のページを閲覧することもあります。さらに、セールなどの販売キャンペーンや広告プランなど、現地の顧客に向けた効果的な販売施策も提供してくれます。
相談できる担当者がいたり、Q&Aなどの情報を豊富に提供している越境ECプラットフォームも多いので、情報収集をしながら上手に活用したいものです。
初期費用は無料で、実際に商品が購入されるまでコストが発生しない越境ECプラットフォームもあります。越境ECが初めてでも、集客施策や運用ノウハウを学べる販売チャネルとしておすすめです。
越境ECを運用する際の課題として挙げられがちな言語。英語などの外国語に苦手意識を持つ人も多いのではないでしょうか?
サイトが外国語表示されていなければ、海外の顧客が商品や決済方法を理解できず、購入してもらうのは難しいでしょう。
外国語対応ができるスタッフを雇うなどのコストをかけたくない。
そんな場合は、自動翻訳を活用するのもよいでしょう。無料で利用できる自動翻訳ツールも増えており、精度も高くなってきています。実際に、自動翻訳ツールを使って顧客対応を進める企業も増えてきています。
英語圏以外の国々に目を向けると、英語が母国語だという人は思ったより多くありません。企業だけでなく顧客も第二言語で対応しているというケースもよくあるケース。特に東南アジアでは、お互いに理解しようとするフレンドリーな顧客が多いという声もあります。
より高い精度を求める場合は、クラウドソーシングから翻訳を外注するのも一つの方法です。自動翻訳では難しい言い回しや、正確性が求められる場面の翻訳などに活用できるでしょう。
クラウドソーシングは一般的な翻訳会社より安価な場合も多く、予算が少ない中小企業でも利用しやすいことが特徴です。
EC販売と切り離すことのできない配送。越境ECでは配送先が外国になるため、国内配送よりも
気をつけなければならない点も多くなります。
海外配送の課題は、配送スピードだけではありません。国や業者によっては荷物の扱いが乱雑な場合もあり、破損や紛失への対策も必要です。
日本郵便の国際郵便、DHLやFedExなど、海外配送を請け負う業者は数多くあります。
同じ国際郵便でも、配送先の国によって事情も異なります。まずは、現地である程度の物流量がある配送業者を選ぶと良いでしょう。物流量が多いということは、その配送業者に依頼する人や企業も多いということ。配達先の状況が見えにくい越境ECだからこそ、できるだけリスクの少ない配送業者を選び、確実に商品を配送することを考えましょう。
さらに、追跡システムや破損や紛失への補償など、不測の事態が起きた場合のサポート体制もしっかりと確認しておくことも大切です。
東南アジア市場でNo.1のシェアがあるShopeeなら、配送サポートも充実。セラーの負担を軽減するために、国際送料の一部をShopeeが補填するサービスがあります(条件あり)。フルフィルメントなどの配送サポートサービスの紹介もあり、配送業者選びで悩んだ時にも便利です。
海外販売において、商品代金の回収は大きな課題です。顧客が期日通りに支払いをしないケースもあり、決済には細心の注意が欠かせません。
販売先の国によって、主要な決済方法も異なります。
販売国によって、よく利用されている決済方法は異なります。最近はクレジットカードだけでなく、さまざまな電子マネーや仲介型決済サービスも広がっています。
顧客の求める決済方法がなかったために、販売のチャンスを逃してしまった……ということがないようにしたいもの。各国の事情に合わせた決済方法を採用することが大切です。
主な決済方法には、下記のようなものがあります。
クレジットカードは世界でもっとも広く使われていますが、現地事情に合わせて複数の決済方法に対応できれば販売の確率もさらに高まるでしょう。
ただ、未払いが起きた場合、遠く離れた顧客に外国語で代金回収を行うのは中小企業にとって大きな労力を必要とします。こうしたリスクを防ぐには、越境ECプラットフォームでの販売がおすすめです。
越境ECプラットフォームは、現地事情を反映した決済方法を取り揃えており、導入も比較的スムーズ。未払いが起きないよう、さまざまな対策を講じているプラットフォームも多いので、リスクを最小限に抑えた運用が可能になります。
越境ECでは、販売先の国の法律に則った運用が求められます。信仰心の高い国では、宗教に関連した規制がある場合も。
現地の法律や規制を知らないというだけで、思わぬトラブルが起きてしまうこともあります。日本とは異なる商習慣の国も多いため、注意が必要です。
越境ECを実際に始めてからトラブルに見舞われないよう、現地の法律や規制は事前にしっかり調べておきましょう。
昨今では世界情勢の急変により、法律や規制の急な変更も珍しくありません。現地事情に詳しいパートナーなどに相談し、理解の漏れがないようダブルチェックを行うことも有効です。
例えば、越境ECプラットフォームのShopeeでは、セラーに向けた無料セミナーや情報提供を行っています。これらは法律や規制のすべてを網羅するものではありませんが、どうしたらよいのか手がかりが掴めない時のヒントとして役立ちます。
なお、どんな販売チャネルを使っても、法律や規制に関する理解はそれぞれのセラーに委ねられている場合がほとんどです。第三者を通して情報収集した場合は、必ず自分で一次情報を確認し、常に最新の動向を把握するようにしましょう。
以上、中小企業が越境ECで直面しがちな課題と解決策をご紹介しました。
人材もリソースも限られている中小企業にとって、ビジネス展開は「波に乗る」ことが大切。
EC市場が急成長しており日本製品へのニーズも高く、さらに大企業がまだ進出しきれていない東南アジア市場には多くのチャンスがあります。こうした市場の後押しを受けながら、越境ECでうまく波に乗りたいものです。
東南アジアマーケットでシェアNo.1のShopeeなら、現地のマーケットに詳しい日本の担当者も在籍。越境ECが初めてでも、相談しながら無理なく進められます。初期費用がかからないので、ぜひ一度試してみては。
この記事を書いた人
Natsuko Sakurai
2拠点生活フリーランス。ロンドン、オランダ、スペイン 3ヵ国での在住や現地企業での勤務経験があり、帰国後も海外ビジネスに関わり続けています。コロナ禍をきっかけに、海外にしかオフィスのない現地企業との国際リモートワークが始まったりと、たえず働き方は進化中。