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アパレル越境ECを始めるには?拡大中の二次流通、成功事例も紹介
2023.05.31
コロナ禍で大きく変わった消費傾向。アパレル業界も例外ではなく、日本の衣料品購入単価は下落傾向です。節約志向が目立つようになり、日本国内への販売だけでは壁を感じる企業も多いのでは……。
しかし海外に目を向けると、コロナ禍で加速した世界的なデジタル化により越境EC市場は急拡大しており今後も成長が続く見込みです。
アパレルの国内市場は成熟期を迎え停滞していますが、海外ではいまだ拡大を続けており、2025年には市場規模が約300兆円に達する見込みとのデータもあるほどです。
さらに近年は二次流通によるグローバル古着市場も成長を続けています。
停滞する国内アパレル市場でビジネスの限界を感じたら、海外市場に目を向けるのも良いのでは?
本記事では、アパレルで越境ECを始めるための基礎知識や二次流通での成功事例をご紹介します。
日本のアパレル業界と越境ECの現状
ここからは日本におけるアパレル業界と越境ECの現状について解説していきます。
少子高齢化が目立つ日本では、若年層の人口減少により、若者向けのアパレル市場規模は徐々に小さくなってきています。かつてはアパレル消費を牽引していた若者たちの消費規模は低下傾向。
加えて、コロナ禍の外出制限により人々のライフスタイルも大きく変化しました。着飾るためのファッション需要は低下し、一気にカジュアル化。低価格で気楽さを求めるカジュアル志向の人が増え、ファッションを楽しむよりも必要に駆られた時だけ購入する傾向が強くなりました。
また、国内アパレル市場では定価購入によるプロパー消化率が低く、値引きによって最終的に消化するビジネスモデルが定着しつつあります。
さらに近年の原材料の調達コストや人件費、さらには店舗家賃などの値上がりなど、日本国内のアパレル販売を取り巻く環境は厳しく、収益性を維持するのは難しくなってきています。
先行きが厳しい日本のアパレル市場に対して、海外の状況はどうでしょうか?
まず越境EC市場について着目すると、市場は成長を続けています。越境EC市場規模は2026年には2019年の6倍を超える、4兆8200億USドルにまで拡大する見込みです。
アパレル分野をみても海外市場は拡大中で、2025年には市場規模が約300兆円に達すると考えられています。
以上の背景から、越境ECや海外のアパレル市場には大きなビジネスチャンスが残されていると言えるでしょう。
また最新のトレンドとして注目したいのが、古着などの二次流通市場。地球環境への意識や原材料の値上がりなどから古着などの中古衣料品へのニーズが高まり、グローバル中古衣料品市場は成長を続けています。
Roland Berger社のリサーチによると、グローバル中古衣料品市場は2017年から18.4%の成長を続け、2025年には770億USドルに達すると見込まれています。
Roland Berger 「Withコロナ時代の アパレル市場の展望」P38
近年、国内ではメルカリなどの二次流通が大きなシェアを占めてきていますが、海外においても中古衣料品へのニーズは年々高まっています。
成熟期に入っている日本のアパレル市場ですが、成長を続ける海外市場に向けた越境ECを使えば、新品販売から二次流通まで多くのチャンスが期待できそうです。
海外向けの越境ECにビジネスチャンスがあることはわかりましたが、実際にアパレルで海外向けに越境ECを始めるにはどうしたらよいのでしょうか?
何から準備すれば良いのか?英語がわからないと難しいのか?……など、これから越境ECを始めようとする人が抱きがちな疑問にも答えていきます。
越境ECでアパレルを販売する際に重要となるのが販売先の国。
国によってニーズの高いアイテムも異なりますし、南半球にある国は日本と季節が逆になります。まずは自社のアパレル商品が売れそうな国を選ぶことが大切です。
インバウンド客を分析して予測する
すでに国内店舗で海外からのインバウンド客に販売実績があるなら、インバウンド客を分析すればニーズのある国の見当をつけることもできます。自社の商品を購入したのは、どの国のどんな層の人だったでしょうか?またどんな商品が人気でしたか?
こうした情報を手がかりにすれば、より精度の高い予測を立てることができます。
また、インバウンド客が旅行中に購入した商品を、帰国後もリピート購入する傾向が高いというリサーチ結果もあります。
体型が近いアジア圏、東南アジアでは日本の二次流通品を信頼
アパレルの越境ECでおすすめしたいのはアジア圏。体型が日本人と近く、配送にかかる日数も少ない点がメリットです。
例えば欧米では、平均サイズが大きかったり、手足が長いなどフィッティングの問題が発生しがち。また、燃料費の高騰により国際送料も値上がりを続けています。
アジア圏の中でも中国市場に注目する日本企業も多いのですが、実は注意も必要です。中国は市場規模は大きいのですが、言語の壁や独自の慣習が強く残るマーケット。ビジネスには中国語は不可欠ですし、売上を伸ばすためには中国独自のSNSを使いこなす必要もあります。
初めての越境ECでは、できるだけ負担を減らしたいもの。
手軽に始めるなら、東南アジアがおすすめです。体型も日本人と近いので、アパレル商品も販売しやすいマーケットです。日本製品の品質に信頼が高い東南アジアの国々も多く、二次流通品にもチャンスがあります。
当然のことながら、越境ECを行うにはECサイトが必要です。
ECサイトには、自社サイトとECプラットフォームの2種類がありますが、初めての越境ECならECプラットフォームがおすすめ。出店に必要な機能はサイト上に揃っているので、煩わしい手続きを最小限に抑えられます。広告やキャンペーンなど、集客に役立つ販促機能が豊富なこともポイントです。
自社サイトで越境ECを行う場合は、サイト上の多言語化だけでなく、集客も自社でゼロから行わなければいけません。これらは越境ECに慣れてきた中〜上級者向けと言えるでしょう。
越境ECに対応している主なECプラットフォームは下記です。
T-mall 天猫 / T-mall Global 天猫国際(中国)
中国EC市場で約60%のシェアを占める、アリババグループ傘下の巨大ECモール。 中国国内法人向けのT-mail(天猫)と海外法人向けのT-mall Global(天猫国際)の2つに分かれています。
品質と安心を求める中間所得ユーザーが多く、信頼を担保するための保証金や年会費、手数料などの比較的厳しい出店条件があります。
G-market(韓国)
韓国のECサイトの中でトップシェアを誇るG-market。幅広い商品ジャンルに対応していますが、中でもアパレル分野に力を入れていることが特徴です。
出店は登録制ですが、韓国語、中国語、英語にしか対応していないためハードルは少し高いかもしれません。
Shopee(東南アジア)
東南アジア最大の越境ECモール、Shopee。日本からはシンガポール、台湾、タイ、マレーシア、フィリピンの5カ国に向けて販売できます。
Shopeeが成長を続けている背景には、大型セール、広告、ライブストリーミングなど、売上を伸ばすための施策が充実していることも挙げられます。
Amazon(アメリカを中心に世界各国)
アメリカで設立されたAmazonは、日本をはじめ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ブラジル、フランス、メキシコなど計22カ国で展開中。(2023年現在)
会員数や販売点数で世界のトップを走り続けるAmazonですが、出店審査は厳しいです。低価格や配送スピードを求める消費者が多いことも特徴です。
英語や現地の言語が苦手で、越境ECをためらっている……。そんな日本企業も多いもの。
最近ではGoogle翻訳などの自動翻訳ツールの精度も高くなってきていますし、クラウドソーシングで安価に翻訳を依頼することもできます。
実際に、自動翻訳ツールを活用しながら越境ECを行っている企業も多く存在しています。
それでも不安……という場合におすすめなのが、日本語のサポートが充実しているShopeeです。Shopee Japanには現地事情に詳しいスタッフが在籍しており、日本語で出店者をサポートしています。また、困った時にいつでも質問ができるプラットフォームもあります。
越境ECでアパレルの売上をアップさせるために必要なポイントは、大きく分けて下記の4つになります。
国によって気候や国民性が違うように、好まれるデザインや色が日本とは異なります。
例えば、中華圏の国々では赤やゴールドが好まれます。中国だけでなく、台湾やシンガポール在住の中華系の人などにはこうした色が人気があります。
日本よりも海外の方が明るい色や有彩色の商品が動きやすいという声もあり、日本で売れにくかったカラフルな商品を海外向けに販売するのもひとつの手。
信仰心の高い国ではデザインや色に宗教的な意味合いが含まれる場合もあるので、販売国の宗教や慣習も確認しておいた方がよいでしょう。
商品を販売するための商品情報。実店舗のないECサイトでは、サイト上に掲載された商品情報がショップ店員の代わりに商品説明をします。
間違いだらけの文章や理解できない内容では、消費者に届かないだけでなく不信感につながってしまう場合もあります。丁寧な説明をしたつもりが、文字量が多すぎると逆に混乱を招いてしまう場合もあるかもしれません。
商品説明は、販売国の消費者に合った言語と文字量で掲載しましょう。
越境ECで売り上げを伸ばすなら、アプリがあるサイトの方が断然有利です。
消費者がECサイトから離れていてもアプリからセールや再入荷のプッシュ通知をするなど、再訪や購入を促すための機能が満載。
自社サイトではアプリの構築には大きな手間と予算がかかりますが、アプリも用意されている越境ECプラットフォームを使えば導入も簡単です。
現代の消費者が毎日多くの時間を費やすSNS。越境ECの売上をアップさせるために、Instagram、Facebook、TwitterなどのSNSも合わせて運用することで相乗効果が見込めます。
フォロワーが増えれば無料で広告できますし、消費者からの投稿をリポストすることで、口コミ投稿と同様の効果が見込めます。
SNSは、遠く離れた消費者とのコミュニケーションにも役立てることができます。
洋服の着用動画など、商品をきめ細かく紹介できるライブコマースはアパレルと相性抜群。サイズ感や仕様などについての質問にその場で答えることで、実際の試着なしでも購入の後押しをすることができます。
コロナ禍に国内向けにライブコマースを導入した日本のアパレル企業も多いのですが、EC化が日本より進んでいる海外ではライブコマースがさらに盛んな場合もあります。
越境ECで得たライブコマースの知見を生かせば、国内向けEC販売にも相乗効果が期待できるかもしれません。
最近のアパレル業界でも、存在感が大きくなってきている古着や中古品などの二次流通。特に日本の中古品に信頼を寄せる海外の消費者も多く、日本企業にはチャンスです。
実際に越境ECで海外向け中古アパレル商品の販売で成功している日本企業の事例をご紹介します。
Brandearは、宅配買取によるブランド品買取事業としてマーケットを拡大。箱に詰めて送るだけという手軽な買取システムにより、累計400万人以上の利用があります。ハイブランドだけでなく、カジュアルブランドやデザイナーズブランド、アウトドアブランドなど幅広いブランドやアイテムの買取に対応。
2020年からは店頭での買取にも注力していますが、販売はオンラインが中心です。2020年からShopeeでの出店を開始し、2021年10月〜12月のShopee台湾の中古ブランド品バッグ部門では、当時の売上新記録を出しました。
Shopeeに出店する前は、北米とヨーロッパをメインに販売していたBrandear。海外市場での更なる拡大を考える中で、東南アジア圏に強いShopeeに出店を決めたそう。
海外販売では海外からの需要が特に高いラグジュアリーバッグなどを中心に販売していましたが、Shopeeでは日本人と体格が似ている東南アジア圏の消費者に向けてアパレルも一部出品中。欧米向けの販売では対応できなかった商材も展開できたといいます。
以前から東南アジアや台湾からのインバウンド客による実店舗への来店も多く、東南アジア・台湾は中国と比べるとブルーオーシャンで進出しやすいという感触があるそうです。
海外では、日本の中古品は品質が高く信頼されやすい ー そんな傾向をよく理解するBrandearでは、「正確な査定」や「適正価格」を大事にして「信頼できる品質」のイメージを打ち出しています。
こうした努力が実り、高額なブランド品でも安心して海外から購入されやすいという「優位性」につながっているといいます。
しかし、高額商品だからこその注意点もあります。商品価格が高くなればなるほど、海外配送にかかる関税も上がります。さらに、高額商品に対する消費者の期待も価格と比例して大きくなります。
二次流通では商品に傷や汚れがある場合も珍しくないため、商品状態がイメージと違うとクレームにもなりかねません。
Brandearではこうしたトラブルを防止するため、消費者の不安や質問には丁寧に対応しています。質問に応じて新たに商品写真を撮影して送ったり、ライブ配信できめ細かく説明をしています。
海外の消費者はライブ配信でも気軽に質問する傾向があるので、配信中に商品イメージのすり合わせがしやすく、商品配送後のキャンセル率を低く抑えられているようです。また、一度購入した人が安心してリピート顧客になるケースも多く、Brandearでは全体の4~5割ほどがリピーターです。
こうした海外消費者との丁寧で誠実なコミュニケーションが、高額商品を継続購入するリピーターの獲得につながっているのです。
以上、アパレル越境ECを始めるための基礎知識や、近年注目されている二次流通について成功事例とともにご紹介しました。
ハードルが高いと思われがちな越境ECですが、ポイントさえ掴めばチャンスも大きいということが伝わったのではないでしょうか?
日本からのアパレル販売や二次流通とも相性の良い東南アジア。日本語サポートやさまざまな販促機能もあり、初めての人でも出店しやすいShopeeで越境ECにチャレンジしてみては。
この記事を書いた人
Natsuko Sakurai
2拠点生活フリーランス。ロンドン、オランダ、スペイン 3ヵ国での在住や現地企業での勤務経験があり、帰国後も海外ビジネスに関わり続けています。コロナ禍をきっかけに、海外にしかオフィスのない現地企業との国際リモートワークが始まったりと、たえず働き方は進化中。